スペイン在住のピアニスト、比石妃佐子を聴く。
「400年の夢」と銘打つ、日本とスペインの交流400周年記念コンサート。
加えてモンポウ生誕120年でもあることから、前半はスペインの作曲家モンポウの最初期の作品《密やかな印象》とグラナドスの華やかな《演奏会用アレグロ》が選曲され、
後半には日本人作曲家2人、吉松隆《4つの小さな夢の歌》と伊福部昭《ピアノ組曲》が演奏された。
細部まで細やかな表情づけがなされていて、力のあるチャーミングなピアニストである。この日は全体のエネルギー配分を考え過ぎたのか、ややスローテンポでモノトーンなところがあったが、構造把握がしっかりしていて、演奏に安定感がある。
彼女の様な人が外国でどんどん活躍してくれると、日本人の株も大いに上がると思う。
モンポウでは優しさのある温かさで安らぎを、グラナドスでは洗練された熟練の技を。吉松作品ではポエジーを披露。ラストに選ばれた伊福部の曲では、リズムカルな流れの中に、日本人のルーツにまで想いを馳せさせられた、いずれの曲も信頼のおける演奏で、
作品の魅力をしっかり引き出しており、素晴らしい。
今回は初めに作品ありき、といった感じの演奏会であったが、どんな作品でも万能にこなせる人のように思う。彼女のドイツものも聴いてみたい。
雨宮さくら
(2013年11月13日、浜離宮朝日ホール)